税理士法人日本会計相続センター|札幌・北海道の相続税対策を専門とする事務所
事例として、両親と二世帯住宅に居住している長男が、父の相続発生時に小規模宅地の適用を受かられるか、パターン別に説明します。
概要 | 建物内部で行き来が可能で、区分所有登記がされていない建物 |
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結論 | 小規模宅地の特例の適用可 |
解説 | 二世帯住宅というよりはただの同居ともとれますが、2階にキッチン、リビング、寝室があり、2階だけで生活できる状態が前提です。 このような状態は何も迷うことはなく、小規模宅地の特例の適用が可能です。 ちなみに二世帯住宅は平成25年度税制改正(以下、「H25改正」という)で見直されましたが、これはH25改正前でも適用が可能だったケースです。 |
概要 | 玄関別、建物内部で行き来ができない構造で、区分所有登記がされていない建物 |
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結論 | 小規模宅地の特例の適用可 |
解説 | 最近は親子であってもプライベートな空間を確保するため、玄関が別で建物内部でも自由に行き来が出来ない二世帯住宅も増えています。 H25改正前のこのケースは、原則として長男は同居親族に該当せず、小規模宅地の特例の適用はできませんでしたが、H25改正により適用が可能になりました。 |
概要 | 玄関別、建物内部で行き来ができない構造で、区分所有登記がされている建物 |
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結論 | 小規模宅地の特例の適用不可 |
解説 | H25改正により、建物の構造ではなく、建物の不動産登記が区分所有登記となっているか否かにより適用可否を判断することとなりました。 このケースでは区分所有登記建物に該当することとなり、小規模宅地の特例の適用はできません。 ちなみに長男居住部分を父が所有していたとしても判定に影響はありません。 |
概要 | 建物内部で行き来が可能で、区分所有登記がされている建物 |
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結論 | 原則、小規模宅地の特例の適用不可 だが、一定の場合には適用できる可能性あり。 |
解説 | 建物内部で行き来ができる構造の場合には、原則として区分所有登記ができませんが、事後的に改修するなど、区分所有登記建物であっても建物内部で行き来ができる家屋も実務上存在します。 このような家屋についても、原則として小規模宅地の特例の適用ができません。 ただし、父の居住の用に供されていた部分が2階にもおよぶ場合には、長男は同居親族に該当し、小規模宅地の特例の適用が考えられます。 例えば、1階部分にキッチンがなく、2階のキッチンで父、母及び長男で食事をしているような場合には、2階部分も父の居住用と認められますので、小規模宅地の特例の適用が可能です。 |
概要 | 玄関別、建物内部で行き来ができない構造で、未登記の建物 |
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結論 | 小規模宅地の特例の適用可 |
解説 | 基本編②と同様に考えて問題ありません。 未登記ということは区分所有登記がされている建物に該当することはありえないため、小規模宅地の特例の適用が可能です。 |
概要 | 玄関別、建物内部で行き来ができる構造で、左側が父所有の1棟建物、右側が長男所有の1棟建物として、それぞれ登記されており、全く別の登記の建物が物理的にくっついているケース |
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結論 | 原則、小規模宅地の特例の適用可。 ただし、それぞれの建物が1棟の建物と認定された場合には、適用不可。 |
解説 | この建物は区分所有登記建物には該当せず、建物内部で行き来ができるため、原則として長男は同居親族と考えられます。 ただし、それぞれの家屋が1棟の建物と認められた場合には、長男は同居親族には該当せず、特例の適用はできません。 ちなみに、租税特別措置法上「1棟の建物」の定義は明確になっていませんが、建築基準法関連の判例では、「1棟の建築物」の定義が明らかになっており、「社会通念に照らし、構造上、外観上及び機能上の各面を総合的に判断して、一体性があると認められる建築物」とされています。 仮に「1棟の建物」=「一の建築物」と考えることができるという前提に立てば、一辺の壁のすべてが接している場合には同居親族と考えられます。 |
概要 | 父所有の母屋に付属家として増築。 建物内部で行き来はできない。 増築部分のみで生活可能な設備が整っている。 |
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結論 | 小規模宅地の特例の適用可 |
解説 | 区分所有登記建物にも該当せず、増築のため全て合わせて1棟の建物と認められるため、長男は同居親族に該当し、小規模宅地の特例の適用ができると考えられます。 |
概要 | それぞれ別棟登記がされている家屋を、事後的に渡り廊下でつなぎ、内部で行き来を可能とした建物 |
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結論 | 小規模宅地の特例の適用不可 |
解説 | 渡り廊下で接している程度であれば、互いに1棟の建物と認められるため、たとえ内部で行き来できたとしても長男は同居親族には該当せず、小規模宅地の特例の適用はできません。 このケースは、建物の登記が別々であろうが、一つの登記であろうが判定は変わりません。 「一の建築物」と認められるかどうかで判断しますので、登記上のような形式は問いません。 このようなケースの場合、区分所有登記建物が登記上の形式で判断することとなっているため、混同している専門家も多いところなので注意が必要です。 |
概要 | 玄関別、建物内部で行き来ができない構造だが、区分所有登記がされていない三世帯住宅の建物 |
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結論 | 小規模宅地の特例の適用可 3階部分も含め、すべてにつき小規模宅地の特例の適用が可能 |
解説 | 基本編②と同様の考え方で、区分所有登記建物でない限り、父の親族の居住部分も小規模宅地の特例の適用が可能となります。 すなわち、父の弟も父の親族に該当するため、3階部分も特例の適用対象となるのです。 ちなみに、3階部分を親族以外の居住用に供していた場合には、1階および2階の床面積に対応する部分しか特例の適用はできません。 |
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